しばらくの無言が続く。
香椎くんはあたしを見つめ、口を閉ざした。
そんな中、昼休みの終わりを告げるチャイムが二人の視線を離す。
まるであたしたちを引き離すように。
「…もう、行かなきゃ。」
そう言いながら、結局口をつけなかったお弁当箱を持ち上げた。
香椎くんは、視線を下げたまま何も言わない。
だからあたしも何も言わず、踵を返して香椎くんに背を向けた。
その時―――。
「逃げんの?」
「……え?…きゃ…っ!」
聞こえた声に振り返れば、次の瞬間感じた背中の痛み。
何が起きたのかわからない。
「ズルイのはそっちでしょ。」
けど、目の前に映し出された香椎くんにあたしの鈍い思考がようやく動き出した。
地面に落ちたお弁当箱が、足に当たって音を立てる。
「か、香椎くん…っ?」
壁と香椎くんの間に挟まれ、更に両腕を掴まれたあたしは思うように身動きが取れない。
「俺から逃げられると思ってんの?」
そう言った香椎くんが、視界の全てを
唇を塞いだ。

