立ち尽くすあたしと、座ってる香椎くんの間に秋風が通り抜けた。


香椎くんはそのまま黙り込み、俯いている。

あたしはどうする事も出来ずに掴まれた腕を押さえていた。




どうして―――。


どうして、香椎くんがそんな顔するの?

何で傷ついたような顔するのよ。



そんなの、卑怯だよ。




「……香椎くんは…、」


耐えきれずに口を開いたあたしに、香椎くんはそっと視線を持ち上げた。


ぶつかった二人の視線が、揺れて。




「香椎くんは、ズルイよ…。」


ぎゅっと制服の上から腕を握り締める。



そうやって、何の前触れもなくあたしに触れて。

ココロごと全てさらって。



なのに、あたしから触れる事は許されない。




あたしを見上げる香椎くんは、その言葉に眉を潜めた。


「…ズルイ?……俺が?」

「………、」

「何で?」



真っ直ぐすぎる彼の声に
何も、言えなかった。