「……つく、」
「えー?」
ぼそっと落とした声に
何?と香椎くんは耳を寄せる。
より近付いた距離が、鼓動を速めてゆく。
それ以上、触れないで。
あたしに温もりを、与えないで。
「ムカつくって言ったの…っ!」
――お願いだから。
もう、これ以上
あたしを惑わせないで。
「ちょ…、どうしたの?いいんちょ、」
「触んないで!」
立ち上がったあたしの腕を、すかさず掴む香椎くんの手を振り払った。
一瞬だけ、掴まれた腕が焼けるように熱い。
火傷したみたいに。
あたしのココロまでも、ジリジリと焦がしてく。
香椎くんは振り払われた手を弱々しく下げ、小さく
だけど、聞こえる声で言った。
「……ごめん、」
と、それだけ。

