「………、」

鏡に映る、自分。


それが憎たらしくて
悔しくて。

みつあみをした髪を乱暴に解き、本当は必要などないメガネをタイルに叩き捨てた。

蛇口を捻り
流れ出る水道水で顔を洗う。



そして、顔を上げれば

そこに現れたのは
本当のあたし。



―――瀬名 柚果。





「……バカ、みたい。」

呟いた言葉は、自分へ。


未だ流れる水は
あたしの醜い心を全て洗い流す。



本当のあたしを誰も知らない。



――彼。


香椎 大和(カシイ ヤマト)以外は。