弾かれるように顔を上げれば、胸の奥が酷く高鳴った。
「何してんのー、こんな所で。」
「…な、んで、」
そう呟いたあたしの小さな声は、彼の笑顔に呑み込まれる。
「寒くない?」
そう尋ねて来る香椎くんは、やっぱりいつもと変わらない。
一方のあたしはと言えば、突然の状況に上手く頭が回転してくれず。
そうこうしてる間に、目の前まで近付いた香椎くんがあたしを見下ろして言った。
「何か、久しぶりだよね。」
なんて、呑気な言葉が頭上から降り注ぐ。
目眩すら感じる、彼の笑顔。
あたしの体の芯を揺さぶるような、その声。
直視出来なくて、思わず俯いたあたしに香椎くんは自然な流れで右隣に座った。
その瞬間、少しだけぶつかった肩があたしの思考を狂わせてゆく。
わざとなのだろうか。
十分余裕があるはずなのに、香椎くんは間を空けて座ろうとすらしない。
まるで、体の右半分が熱を帯びてるみたいだ。
何度も裸で触れ合ってるのに、制服越しに伝わる温もりがココロを震わせて。
「いいんちょー。」
そう呼ばれた瞬間、保っていた感情が溢れ出した。

