あの後、菜未ちゃんに

「どうして先に行っちゃったの?」

そう聞かれたけど
特に理由はないよ、と曖昧に答えておいた。


さらについさっき
お昼を一緒に食べよう、と言われたが丁重に断った。


こんな気持ちで、菜未ちゃんとお弁当と囲む程、心に余裕はない。


せっかく仲良くしようとしてくれているのに。

あたしのココロは軋んだ音を立て、彼女へ素直に心を開けないのだ。



重たい気持ちを抱えたまま、お弁当片手に渡り廊下を抜け

人気のない体育館裏に辿り着く。


そして適当に腰を下ろすと、最初から食べる気なんてないお弁当箱を横に置いて空を仰いだ。


ひゅう、とどこか肌寒い風が、くすんだ心に吹きすさぶ。


しばらく流れる雲を目で追い掛け

溜め息をひとつ吐き出すと、膝を抱え、そこに顔を埋めた。




頭を駆け巡るのは、昨日の音楽室での二人の会話。

今朝の菜未ちゃんと、香椎くんの声。


思い出したくなんてないのに、どうしたって考えてしまう。

それも無意識だから、尚更救いようがない。


視界が閉ざされた世界で、小さく唇を噛む。


すると、風の音だけだった体育館裏にカサっと枯れ葉が鳴った。


次いで聞こえた、声。



「みーっけ。」