何がそんなに面白いのかわからないけれど
ころころと笑う西野さん…
菜未ちゃんの姿は
いつも教室で見る彼女とは違い、とても柔らかい印象を受けた。
だからこそ、何だか拍子抜けしたというか。
とにかく
今の現状が、嬉しくて。
…友達、かぁ。
心の中で呟き、嬉しさに思わず顔が綻んだ。
相変わらず、空はどんよりとした雲を纏っている。
でも、教科書を忘れてよかった、と思った。
「へえ、柚果はF町に住んでるんだ。」
「うん。な、菜未ちゃんは?」
「あたしはI町だよ。」
それからも他愛ない話をしていると、下駄箱へ続く階段の前で「あ、」と菜未ちゃんがふいに立ち止まった。
それに合わせ、あたしも立ち止まる。
すると、菜未ちゃんは
「ごめん、」と言って続けた。
「あたしちょっと行く所あるんだ。」
「…行く所?」
「うん、ちょっと音楽室にね。」
その言葉に、ドクンと心臓が嫌な音を立てる。
音楽室――――。

