「何か忘れ物?」
彼女は至って普通に話かけて来た。
正直、戸惑ったけれど
ここで返事をしないのは不自然だし、あたしも冷静を装って返事を返した。
「そ、そう。英語の教科書、忘れちゃって…。」
「ふーん。もうすぐテストだもんね。」
「…うん。」
「でも委員長ならテスト余裕でしょ?いつもトップだし。」
「そんな事…、」
初めて、香椎くん以外の人とこんなに話したかもしれない。
というか、今まで話をかけられなかっただけだけれど。
でも、彼女は不思議に思わないのだろうか。
あたしの席は窓際で。
自分の席とは関係ない、この場所に居るあたしを。
「委員長?」
「…え?」
再び呼ばれ、顔を上げると
西野さんはニコっと笑って言った。
「あたしもう行くけど、委員長はまだ居るの?」
「…あ、う、ううん!もう、帰る!」
「そう。じゃあ、一緒行こうよ。」
「……え?」
…一緒に?
慣れない言葉に
頭の中が疑問符だらけ。
すると、彼女はふっと口元を緩め口を開いた。
「早くしないと置いてくよ?」

