「…あった。」

放課後の教室は、思った以上に静かだった。


テスト前だから部活もないし
昼間の騒がしさが嘘のような気分になる。


机の中に置いてあった教科書を見つけ、カバンにしまうと

夕日に染められた教室で
あたしは、そっと視線を廊下側に移した。



いつも人が集まる、その場所。

あたしが近付けない、香椎くんの席。


彼の席から、教室は
あたしは、どう見えているんだろう。

一歩足を進めると
カタン、とイスが鳴る。


香椎くんはいないのに
席へ近づく度、心臓が速くなってゆく。

そして、あと一歩。


その時だった。




「…委員長?」

突然開いた扉に、聞こえた声があたしの足を止めた。


弾かれるように
視線をその人物へ向ける。

ぎゅっと心臓が縮まる思い。


まるで秘密を知られたような、そんな感覚。




「……西野さん、」


教室の扉を開けたのは
同じクラスの、西野さんだった。