その日はどんよりとした雲に覆われ、秋晴れと呼ぶには程遠い天気だった。
…昨日は晴れてたのに。
ぼんやりと思いながら
信号待ちで足止めをくらう。
周りには、これから遊びに行くのであろう女子生徒たちの笑い声が響いていた。
そして今にも雨を降らしそうな灰色の空の下、校舎を背にあたしはある事に気が付く。
「…英語の教科書、」
そう、教科書。
これから家に帰ってテスト勉強をするつもりだったのに、机の中に置きっぱなしにして来てしまった。
テストはもう明後日まで迫っている。
どうしよ…。
雲を見上げ、悩む事数秒。
「…戻る、か。」
うん、仕方ない。
教科書がなきゃ、困るし。
そう言い聞かせ
青に変わった信号を見届け、踵を返した。
横断歩道を渡る生徒たちとは逆の、学校へと。

