「よし、今日は自習にするぞ~。」
先生の掛け声と共に
わぁ、と教室が一気に沸いた。
そして、真っ白なチョークで
黒板にデカデカと書かれた“自習”の二文字。
気が付けば
来週にまで迫ったテスト期間。
でも、このクラスの生徒たちは
そんな事は頭から抜け落ちているのか
自習というのは、お喋りや居眠りの時間だと勘違いしているらしい。
あちらこちらから聞こえる、笑い声や話し声がやけに耳につく。
それを黙って見過ごしている先生も先生だけど、せめてもう少し静かにしてもらいたい。
はぁ、と半ば諦め気味に息を吐き出すと、あたしは机から読みかけの小説を取り出した。
しおりを外し
小説の中へ入り込む。
ジャンルはミステリー。
謎だらけの物語は
いよいよ終盤に差し掛かろうとしている。
この謎が解けてゆく感覚が、何とも言えないくらい好きだ。
だから読むの
もっぱらミステリーかサスペンスばかり。
どこのおばさんだ、と言われてもこればかりは止められない。
徐々に紐解かれてゆく謎。
文字を追うのもじれったいくらい、没頭していたその時。
「大和~っ!」
その名前に
ページを捲ろうとしていた手が止まった。

