それでも、すき。



結局、タバコを捨てたのは誰か…犯人はうやむやにされたまま、騒動は事なき終えて。

だけど、しばらくは先生も目を光らせているだろうから、迂闊にタバコを吸えなくなってしまった。


窮屈な学校。

タバコを吸ってる時が、唯一あたしが羽を伸ばせる時間だったのに。


…なーんて、自業自得か。




「寒いなぁ…、」

吹き付ける風の冷たさは更に増して、煩い教室の隅であたしは自分を抱きしめた。

視界の端で、栗色が揺れる。




『あたしは、委員長なんかじゃないっ!』


――あれから。

あの日から、あたしと香椎くんの関係はぷっつりと途絶えた。

…ううん、違うな。

あたしが切った、って言った方が正しい。



それでも、香椎くんは懲りずにノートを借りに来るけれど、あたしの答えは同じだ。

毎日毎日、あたしがノートに書くのは二人にしかわからない暗号。


“バツ印”


なのに、香椎くんはその暗号が見えてないのか、今日も同じ言葉を繰り返すんだ。



「委員長。」


…ほらね。



「英語のノート、貸して?」