それでも、すき。



――次の日。


言うまでもなく、朝から小難しい顔をした担任が告げたのは

「昨日、ある女子トイレからタバコが見つかった。」

なんて、お決まりの言葉。



犯人は一目瞭然。
このクラスの委員長である、あたしだ。

でも、誰もあたしを疑ったりしない。


もちろん、先生だって同じ。


まさかコイツが犯人な訳ない、そんな目であたしを見て、荷物検査は難なく抜けられた。

と言うよりも、端からあたしになんて眼中にないのだろう。


くまなくカバンの中を調べられた他の女子生徒は、文句を垂れながら

「アイツが怪しいよね」と、犯人が誰か、ヒソヒソ噂話。




…くだらなくて笑えて来る。


みんなあたしが犯人だと知ったらどんな顔をするんだろうか?

意外、そう思うのかな。


“人は見掛けによらない”

そんな言葉をよく耳にするけど、固定観念に縛られたこの学校の人はあたしがタバコを吸ってる、なんて微塵も思わないんだろう。




――あたしと香椎くん…

いや、“委員長”とあの香椎くんが抱き合ってる事も。



誰も、気が付かないように。



…人間って、つくづく憐れだ。