それでも、すき。



昔からそうだった。
誰もあたしの心を見てはくれない。


外見だけで判断して
その外見をなじって、そして嫌う。


なら、自分を捨てようと思った。

瀬名 柚果を殺してしまえばいい、と。



でも―――。




「……っ、」

トイレに駆け込んだあたしは
個室に入り、ポーチからライターを取り出した。

続いて、タバコ。


…落ち着かなきゃ。
こんなの、あたしじゃない。

あたしは委員長でいなきゃ、いけないの。



けれど、震える指先は
思うように動いてくれなくて。

いつも通りタバコを銜え
火を点けようとフリントを回すと、無情にもライターはあたしの手を離れ便器にポチャリ。


その瞬間、耐えていたはずのモノが頬を伝った。




「…もぉ…っ、何なのよ…っ!」

心の奥が、不安定に揺れる。


ぐらぐら、ゆらゆら、とあたしの心をかき乱す。


それなのに
心の真ん中に居座るのは、香椎くんの笑顔で。



力任せに投げたタバコは
沈んだライターの上で、頼りなく浮かんでいた。