「香椎くん…っ!」
ずっと好きだった。
ずっと、想ってた。
だからこそ、恋人になれた時。
あたしは欲張ってしまった。
疑ってしまった。
信じなきゃ、いけなかったのに。
信じたい、そう思ってたはずだったのに。
でも、今なら。
今なら全てを受け止められる。
今更、かもしれない。
…だけど。
だけどね、香椎くん―――。
「ちょっと!」
香椎くんは振り返らない。
代わりに振り返ったのは、吉永さんで。
「さっきから何なの!?」
前を見据えたまま廊下を歩く香椎くんとは逆に、吉永さんがあたしへ向かってくる。
けれど、あたしは構わず彼を呼んだ。
「香椎くん!」
お願い、ちゃんと聞いて。

