それでも、すき。



あまりに突然だった。

本当に急すぎて、これは夢なんだと必死に言い聞かせた。


でも、記憶に深く
色濃く刻まれてる、中学時代の傷痕。

そして逃げ道に選んだ、タバコ。

自分を偽り、あたしは自分を捨てた。


消したい。
消えて欲しい。

けれど一生消えない、過去―――。





しばらくの沈黙のあと

瞳ちゃんは迷いのない声で言った。



「大和が別れる時、あたしに言ったの。」



『ごめん、瞳…俺―――。』


“他に好きな子がいる”



伏せた睫毛が、濡れていた。

あたしは黙って、瞳ちゃんの横顔を見つめる。



…きっと瞳ちゃんはすごく傷ついたんだ。


すごく、香椎くんのこと

好きだったんだ。



耐え切れず、ぎゅっと制服の裾を握り締める。



だけど、ふと疑問に思う。


香椎くんが忘れられない人は、瞳ちゃんじゃなかった。


それならば

香椎くんが想い続けてる人は、誰?