それでも、すき。



混乱する頭で懸命に答えを探すけれど、余計に思考が絡まってく。


思い出すのは、最後の音楽室で見せた香椎くんの切ない表情。

そして、冷たくあたしを見下ろした瞳。



――ねぇ。

香椎くんの
“忘れられない人”は誰なの?



すると、そんなあたしを見て再び瞳ちゃんは話を切り出した。


「確かに、あたしと大和は付き合ってた。」

でも、と声が途切れる。


あたしは顔を上げ、戸惑いながら瞳ちゃんを見据え

次に続く言葉を待った。


心なしか、瞳ちゃんの目が潤んでいて。

そして彼女の口から零れた言葉に、あたしは愕然とした。




「別れよう、って言ったのはあたしからじゃない。

大和から、だった。」



……え―――?



あまりの衝撃に
体が、声が震えてゆく。


「嘘…、だって香椎くんは!」

「嘘なんかじゃない。あたしは大和にフラれたの!」


感情を剥き出しにし、声を張り上げた瞳ちゃんが嘘をついてるとは思えなかった。