それでも、すき。



ピー…、と甲高い音がホームに鳴り響き、電車が走り出した。



「柚果!」

ようやく追いついた菜未ちゃんの声が、背中から聞こえる。



人の居なくなったホームには、あたしと菜未ちゃん。

そして、瞳ちゃんと知らない男。


香椎くんじゃない、男だった。



向かい合った瞳ちゃんに、もう一度尋ねる。


「ねぇ、瞳ちゃん…。これは、どうゆうことなの?」


…香椎くんは?


そう問いかけようとしたところで、瞳ちゃんの横に居た男が口を開いた。



「つーか、お前こそ何なんだよ?」

「あなたには聞いてません。」


自分でも驚く程、強い口調だった。


「ああ?」と眉を吊り上げた男を、瞳ちゃんが止める。



「やめて、直紀。」


ナオキ、と呼ばれた男はその呼びかけに一瞬だけ納得のいかない表情を浮かべたけれど

「俺、向こうで待ってっから。」

と、ホームにある奥のベンチへ歩き出した。



そして男が遠ざかったところで瞳ちゃんは、さも面倒くさそうに言う。



「って言うか、そっちこそ何?」

「…何、って、」

「直紀のこと聞きたいの?それとも大和のこと?」


その言葉に、頭の中で何かが弾けたような気がした。