それでも、すき。



「おはよ、柚果!」


駅に着くと、改札の向こう側で菜未ちゃんが手を振っていた。

驚きながらも急いで定期を通すと、彼女へ駆け寄る。


「どうしたの、菜未ちゃん!」


戸惑うのも無理はない。


菜未ちゃんの最寄り駅は、この駅のずっと先。

もっと学校寄りなのだ。



「んー?たまには一緒に行こうかな、と思って。」

「菜未ちゃん…、」

「本当は待ち合わせして行こうと思ってたんだけど、柚果携帯持ってないし。」


ちょっとぶっきらぼうに、だけどそれが菜未ちゃんの照れ隠しなんだって

あたしは知ってる。


心配して来てくれたんだってことも。


くすぐったいような、温かい感情が胸を込み上げた。



「…ありがとう。」

「なっ、何よ、改まって!」

「だって…っ、」

「んもう、遅刻するから早く行くよ!」


涙目になるあたしの腕を、菜未ちゃんが引く。


そんな菜未ちゃんの優しさに胸がいっぱいで。

グスグスと鼻を鳴らしながら顔を上げた。



――と、その時。


視界に映った人物が、あたしの足を引き止めた。