きゅ、っといつもより少しキツめにリボンを結ぶ。
みつあみも、今までで一番上手く出来た。
度のないメガネを掛け、鏡に映る自分と睨めっこ。
――今日から、新学期。
一人きりのリビングで朝食を摂り、玄関へ向かったあたしは
誰に言うでもなく呟いた。
「行って来ます。」
トン、とローファーが鳴る。
ぐっとドアノブに力を入れ
扉を開ければ、清々しい朝の空気が優しくあたしを撫でた。
…大丈夫。
意味もなく、何度もココロに刻み込む。
何が、なんて愚問だ。
もう考えない。
もう、クヨクヨしないって決めていた。
本当は会えなくなればいいけれど、彼とは同じクラス。
そうゆう訳にもいかないから。
短い冬休みの間
あたしなりに出した答えは、ただひとつ。
新しい年と共に、全てをリセットして。
少しずつ、香椎くんを
“過去”に変えてゆこう。
そう、思っていた。
―――この時までは。

