それでも、すき。



結局、香椎くんが学校に来たのは、停学になってから二週間以上経った頃だった。


ちょうど12月の真ん中。

冬休みを間近に控え、みんなが浮足立っているのがよくわかる。



そんな時に、香椎くんはひょっこりと現れたのだ。

でも、驚いたのはそんなことじゃない。




「大和、その髪どーしたの!?」

いち早くそれに反応したのは、いつも香椎くんにベッタリだった吉永さんだった。

そんな吉永さんに、彼は面倒くさそうな表情で一言。



「何となく。」




あたしはその様子を輪の外から眺めるだけだった。


彼のトレードマークだった栗色は消え、塗り替えられた黒色の髪。

入学した当時から
香椎くんはずっと茶髪だったから、何だか全然知らない人に見えた。



そして、本当に一瞬だけ。


ほんの一瞬、黒髪の隙間から香椎くんと目が合った。

…ような気がする。



香椎くんの視線はすぐに違う場所へと移され

そこで彼は、教室中に聞こえるような声で言った。




「オンナが染めろって言うから。」



それは、輪から外れた場所に居たあたしにも、しっかりと届いた。