それでも、すき。



「香椎、くん……?」

いつもの彼とは違う態度が、あたしの声を震えさせた。



“いいんちょー”

そう呼ぶ声も、以前とは明らかに違う。


香椎くんはいつも笑ってて。

何も考えてなさそうに見えて、でも実はすごく優しくて。



そんな彼に、あたしは惹かれたはず。



「俺は別に委員長の為にあんな事した訳じゃないよ。」


じり、と縮む距離。


「じゃあ、何で……、」

「教えて欲しい?」


だけど、今の香椎くんは全然違う人に見える。


あたしを見つめる目も、何もかも。





「謹慎になれば、遊び放題じゃん。」




――こんなの、香椎くんじゃない。



教室の扉と香椎くんに挟まれ、あたしは言葉を失くす。

あたしを見下ろすその瞳は冷たくて、ココロの中の何かが崩れてゆくのを感じた。


そして、香椎くんはおもむろに扉を開けた。



「きゃ…っ!」

扉に寄り掛かるように挟まれていたあたしは、当然その拍子に床へ尻もちをつく形になる。