言いたい事はたくさんあるのに、胸の痛みに言葉が出て来ない。
まるで、心臓が潰れてしまったみたいだ。
後ろ姿だけで
こんなにも愛しいなんて。
こんなに、すきだと思うなんて――。
ぎゅっとスカートを握り締める。
そして、震える声を振り絞り問い掛けた。
「…何で、」
ねぇ、香椎くん…。
あんなに近くに居たのに。
あんなに、抱きしめ合ったのに。
今はこんなにも、遠い。
遠すぎるよ…。
「何で…あたしの事、庇って…くれたの?」
声に、不安が滲む。
振り返ってもくれない彼が、答えてくれるとは思えなかった。
でも、しばらくして聞こえた声。
「…庇う?俺が?」
それはあたしの知らない、香椎くんの声で。
「勘違いしないでよ、いいんちょー。」
こちらに体を向けた香椎くんの顔は、笑っているはずなのに
何だか怖かった。

