それでも、すき。



そう呟いたあたしに
菜未ちゃんは厳しい顔を崩さず言った。


「今ひとつだけ言えるのは、ここで柚果が出て行っても、事態は余計悪化するだけだよ。」

「じゃあ…、」


潤んだ視線を投げる。

菜未ちゃんの表情は、変わらなかった。



「よく、考えて柚果。」


ぎゅっと力強く
菜未ちゃんはあたしの手を握り締める。



「――大和が、何でこんな事したのか。」



何で……?





教室に返ると
香椎くんはまだ戻って来てなかった。

クラスメイトの刺さるような視線を浴びながらも、あたしは菜未ちゃんに言われた言葉の意味を考えていた。


でも、答えは見つからない。


どうして?
何で?

そればかり浮かんで、疑問は増えていくだけ。



そして、体育の時間。

あたしは「気分が悪い」と言って、教室で休ませてもらう事にした。


さっきの事があったからか、先生は何も言わず了承してくれた。


びんやりと窓の外を眺めながら、思うのは香椎くんの事。



気を緩めたら零れてしまいそうになる涙を、何度も呑み込んだ。