それでも、すき。



「…一体、何があったの?」


未だ困惑してるあたしに、菜未ちゃんはいつもと変わらない優しい声で訊いてきた。

でも、あたしは答えらしい答えも言えず、ただ首を横に振るだけ。



「違うの…、香椎くんじゃ、ない…、」

違う、違うと何度も同じ言葉を繰り返す。



「あ…たし、言わなきゃ…。」

「…柚果、落ち着いて。」

「香椎くんじゃないって、早く言わなきゃ…っ!」

「柚果っ!」


がっしりと肩を掴まれ、あたしの視線が菜未ちゃんとぶつかった。



「しっかりしなよ!大和は柚果を庇ってくれたんでしょ!?」

「香椎くんが、あたし…を?」

「じゃなきゃ、他に何だって言うの!?」


その言葉に
だらり、と腕の力が抜ける。

脳裏に浮かぶのは
最後に見た、教室を出てゆく香椎くんの後ろ姿。




……どうしよう。


「…あたしはどうしたら、」


どうしたら、香椎くんを助けられるの…?



悪いのは、あたしなのに―――。