それでも、すき。



そして、あたしと香椎くんの距離が縮む。


だけど一度も視線を向けることなく、あたしの横を通り過ぎた香椎くんは

「犯人は、俺ですよ先生。」

そう言って先生の前に立ちはだかった。



頭が、上手く回転してくれない。


今すぐにでも
香椎くんじゃない、犯人はあたしなんだって

そう言わなきゃいけない、わかってるのに。



わかってるのに、喉が貼り付いてしまったみたいに声が出ないんだ。




「ちょっと職員室に来い。」

そうこうしてる間に
香椎くんは先生に連れられ、教室を出て行ってしまった。


瞬間、あんなに静かだった教室が急に騒々しくなる。


「本当に大和が犯人なの!?」

「信じられない!」


そんな声が、ありとあらゆる所で聞こえて来て。



「柚果!」


ぼんやりとするあたしの肩を、菜未ちゃんが思いつめた表情で揺さぶって来た。


そこでやっと、喉からかすれた声が出た。



「菜未ちゃ…、」

「こっち来て。」


そう言われ、あたしは菜未ちゃんにトイレへ連れて行かれる。

クラスメイトたちが
こぞってあたしたちを見ていた。