それでも、すき。



「何って、今俺が言った通りですよ。」


振り返った先には
涼しい顔をして、深くイスに腰を掛ける香椎くんの姿。

あたしは状況が理解出来なくて、間抜けな顔で彼を見つめた。



「どうゆう事なのか、説明しろ。」

先生は先ほどよりも厳しい声色で香椎くんに尋ねる。


彼の視線は真っ直ぐに先生へ向けられていて、それがあたしと交わる事はなかった。



「これはお前のなのか?」

明らかに女物のポーチにを掲げ、先生は怪しんでいるように問い掛ける。



香椎くんは慌てる様子もなくこう答えた。


「女にもらったんですよ。」


と、むしろどこか楽しそうに。



そんな香椎くんに、先生はドン!と教壇を叩く。

ビクリ、と思わず肩が跳ね上がった。



「だが、吸った形跡があったのは女子トイレだぞ!」

「だから、カモフラージュ、ってヤツですよ。」

「何…!?」


ガタンとイスが音を立てる。

そして香椎くんは立ち上がって言った。





「あそこの女子トイレなら見つからないし、委員長に持たせておけば見つからないだろうと思って。」