それでも、すき。



先生の手が止まった。



それを視界の端に感じて、ぎゅっと固く目をつむる。


もうダメだ…。



そして差し出された、見覚えのあるポーチ。

「…このポーチは何だ?」


先生があたしに尋ねると
教室中が再びざわつき始めて。


俯くあたしに、先生は諭すような口調でもう一度問う。


「瀬名、答えなさい。」


これ以上
誤魔化せないと思った。

もう、逃げられないと。


だからあたしは、意を決してようやく覚悟を決めた。


「…それは、」


―――その時だった。





「なーんだ。見つかっちゃったか。」


ざわつきが、ピタリと止まる。
先生の視線があたしから、その声の主の方へ向いて。



「何だ、香椎。今、何て言った。」

先生の言葉に
あたしもゆっくりと振り返った。




……香椎くん…?