「今朝、また女子トイレでタバコを吸ってる形跡が見られた。」
朝のホームルーム。
先生は小難しい顔でそう言った。
一気にざわつく教室。
先生は「静かにしろ」と生徒たちを宥め、厳しい口調で続けた。
「見つかったのは3階奥の女子トイレだ。」
…それは、あたしがいつもタバコを吸う場所で。
未だに騒がしい教室に、先生は更に声を荒げた。
「本当はこんなことはしたくないが、今から荷物検査を行う。」
「えぇーっ!?やだぁ!」
女子からの文句が飛び交う中、あたしは俯いて考えていた。
前回は逃れられたけど
二回目ともなれば、きっと荷物をくまなく調べられる。
あたしのカバンの中にしまわれた小さなポーチ。
その中にはもちろん、タバコ。
でも、今ポーチを取り出したら絶対怪しまれる。
「次、瀬名。」
「…はい、」
あたしは一利の望みを賭け、カバンを持って立ち上がった。
ゆっくりと、先生の立つ教壇へ向かう。
ドキドキと痛いくらい心臓が脈を打つ。
そして躊躇いがちにカバンを差し出せば、先生は
「瀬名に限ってないとは思うんだがな。」
念のため、とあたしのカバンを開けた。

