それでも、すき。



二人はピッタリと肩を寄せたまま、あたしたちに気が付く様子もなく、駅の構内に消えていった。

あたしは菜未ちゃんに支えられながら、二人の後ろ姿を見送る。



目の前が、ぼやけてゆく。

最後に見えたのは
笑う、瞳ちゃんの横顔で。




「…柚果、」

そんなあたしに、菜未ちゃんが申し訳なさそうに眉を寄せた。

ハッとようやく我に返る。


これ以上、菜未ちゃんに心配かけちゃいけない。

だからあたしは深呼吸を一度だけして、無理に笑顔を張り付けて言った。



「…大丈夫、だから。」

心配ないよ、と。


そんなあたしのバレバレの嘘に、菜未ちゃんは付き合ってくれた。






それから何度か、街で二人を見掛けることがあった。

いずれも、気付かれる前に隠れていたから、二人があたしに気付くこともなく。


日に日に増してゆく痛みに耐えかねた頃。







―――事件は起きた。