「柚果も歌えばよかったのにー。」
「あ、あたしはいいの。」
「またそんな事言って!今度は柚果にも歌ってもらうからね!」
「そ、それはちょっと…、」
だけど、不思議。
あんな落ち込んでた気分が、菜未ちゃんと居る事で軽くなったみたい。
自然とあたしの顔に、笑顔が生まれる。
すると菜未ちゃんがおもむろに
「…よかった。」
と呟いた。
「…え?」
よかった、って…どうゆう意味?
意味がわからないまま
菜未ちゃんに視線を向けると彼女はニッと笑って言った。
「何か柚果、元気ない気がしたから。」
「菜未ちゃん…。」
「ここのところ、ずっとね。」
気になってたんだ、と菜未ちゃんはどこか照れくさそうに視線を泳がせる。
夜の街は騒がしい。
何もかもが眩しすぎて、あたしにはきっと似合わない。
そんな素敵な言葉も。
「…何で、」
あたしには、もったいなさすぎる。

