でも、心配ご無用。
目を付けられない程度にダサく見せる事、それを中学時代の経験を得てあたしは身につけたのだ。
誰も“委員長”と香椎くんが
音楽室でそんな事をしてるなんて思いもしないだろう。
だからこそ、香椎くんはあたしを選んだのかもしれない。
それでいい。
それが、正しいと思う。
……なのに。
いつからだろう?
この行為に
愛を、探してしまったのは――。
「あ、いいんちょー。」
「………。」
朝、いつものように
香椎くんはあたしの席に向かって来た。
そしてお決まりの言葉。
「古典のノート見せて。」
…あぁ、今日は古典か。
なんて思いながら
無表情を崩さぬよう、古典のノートを差し出す。
それと同時に返されるのは、昨日貸した英語のノート。
「いつもありがと、委員長。」
営業スマイルで去っていく彼を
メガネ越しに一瞥する。
「大和~、ノートならあたしが見せてあげるのにぃー。」
案の定、待ってましたと言わんばかりに女の子に囲まれる香椎くんは、言い飽きたであろう言葉をその子たちに言うんだ。
「んじゃ、カラダ貸してよ。」

