それでも、すき。



まるで夢から醒めた気分。


あたしはずっと
ふわふわとした、幸せの中で包まれていたんだ。

たったひと時の、とびっきり甘い幸せの中に。



それがニセモノだと

全て作りモノだと、ずっと気付かずに。





「…ふふっ、」

あまりにバカバカしくて、思わず笑みが零れた。


本当は胸が潰れそうな程苦しいのに。

今すぐにでも、罵ってやりたいのに。


出てくるのは
涙と、現実を受け止められないココロの葛藤。


くしゃ、っと前髪を掻き、香椎くんに顔を見られないように俯いた。



…いいんだ。

これで、いい。


最初からわかりきっていたじゃない。

あたしと香椎くんは、違う。


―――違うんだよ。




「…ばいばい、」




“恋人”になんか、なれるはず


なかったんだ。