それでも、すき。



「何?」

場所を移動して向き合うと、いかにも鬱陶しそうに瞳ちゃんが口を開いた。

この前再会した時とは違うその刺のある口調が、中学時代を思い出させる。



二人の間には微妙な距離。

あの頃と
何も変わらない。


そんなあたしたちを、秋風が撫でゆく。



「………、」

…どうしよう。
何から話したらいいのかわからない。


自分で追い掛けたはずなのに、冷たい目線に刺され、あたしは黙り込んでしまった。



――昔からそうだ。


何をされても
酷い言葉を浴びせられても

結局卒業するまで、あたしは瞳ちゃんに何も言い返せなかった。


距離だけじゃなく、あたしもあの頃から何も変われてない。

怖くて、怯えて、逃げて。


向き合う事から
ずっと目を背けてた。



でも―――。


あたしは下げていた顔を上げ、瞳ちゃんへ視線を向ける。



突き刺さる目線に怯みそうになりながらも

「…あ、あのね、」

やっとの思いで声を振り絞り問い掛けようとすると、瞳ちゃんはすかさず言葉を被せて来た。



「大和の事でしょ?」