それでも、すき。



何故、と聞かれてもわからない。

でも気が付けば
あたしは走り出していた。


「すっ、すみません…っ!」


謝りながら流れに逆らうあたしを、ぶつかった人が迷惑そうな視線を投げて来る。

走る度に揺れる髪の毛に
あたしは早速三つ編みを解いた事を後悔していた。



追い掛けて、あたしはどうするんだろう。

何を話したいんだろう。


答えは出ないのに
あたしは諦めずに瞳ちゃんを追い掛ける。

その間も彼女の名前を呼び続けたけれど、車道越しの瞳ちゃんに聞こえるはずもなくて。


通り過ぎてゆく車の音にあたしの声も、消されてしまう。


そして、もう一度瞳ちゃんの名前を呼んだその時。


ちょうどよく信号が青に変わり、ようやく車の流れが途切れた。





「瞳ちゃんっ!!!」


そこでやっと瞳ちゃんの足が止まる。


横断歩道を渡りながら、あたしは乱れた呼吸を整えた。




振り返った彼女の目は


「…柚果。」


やっぱり、どこか冷たかった。