それでも、すき。



罪悪感、なんて
そんなモノ最初からなかった。


それに、タバコを吸う事の何がそんなに悪い事なのだろう。

4つ離れたお姉ちゃんだって
高校生の頃に吸っていたのを見た事あるし、両親だって喫煙者だ。


ただ、未成年ってだけなのに。

今吸っていたって、20歳を越えてから吸ったって、そんなに変わらないじゃないか。


落ち着ける場所がないあたしにとって、タバコは唯一気持ちを落ち着かせてくれる。

煙を吐き出す度、ぶつけようのない感情が、どこかに吹き飛ぶような気がした。



それの、何がいけないの?




『いーよ。』

投げかけた視線の先に、香椎くんはニコっと口元を綻ばせた。


『……本当に?』

『うん、誰にも言わない。その代わり、』

安堵したのも束の間
香椎くんの笑顔が怪しく光ったのを、あたしは見逃さなかった。


思わず身構える。


すると、彼は一歩距離を縮め
あたしの視線に合わせるように少しだけ屈んで言った。



『新学期初日、音楽室に来て。』