君に伝えておきたい話があるんだ。

たいした物語じゃないんだ。
この先、生きていく上でも、
重要ではないかもしれないし、
君の何かを、変えられる話でも
ないかもしれない。

それにちょとだけ、
残酷かもしれない。

だけど、話をしておきたいんだ。
君より、少しだけ、
長生きした僕の、話。
大切なものを
無くしてきただけの、
僕の後悔の、話。

だけど勘違いしないでほしい。
この物語は、教訓とか戒めとか
そんなものでは、ないんだ。
僕の話を最後まで聞いてくれたら、
すぐにでも、忘れ去ってもいい
物語なんだ。

僕が僕の話をする。
君がただ聞いてくれる。

それだけで、僕は
充分なんだ。
それだけで、僕はまた
無駄な重い荷物を背負って
歩いていける。

だから、君の重い荷物も
僕が背負っていける。
歩いていける。
僕に、君のすべての苦痛を
投げつけてもいい。

僕の話を最後まで聞いてくれたら、
すぐにでも、忘れ去ってもいい。
一緒に君の辛さも忘れさってほしい。
悲しさも、忘れてほしい。
すこしだけでも、いいんだ。
君は、忘れていいんだ。

君に話したい物語が、
あるんだ。