「あ、音祢(ねね)!!」
深影という青年は片方の手で殴られた頬を押さえながら「ヤッホー」と音祢という少女に手を振る。
「・・どうしたの、その頬?」
「え?ちょっとこの子に痛い仕打ちを・・・」
そう言って青年は苦笑いを浮かべ、私の方を指差した。
少女はその指先を辿るように私を見上げると、私と目が合った。
「あら、あなたは昨日の・・・
見るからにはとても元気そうね」
少女は上から下へと私を見遣ると、「よかった」と黒い瞳を細め、私に微笑みかけてきた。
その笑顔に私は困惑した。
これまでの人生の中で、こんな風に笑いかけられたことが一度もなかったからだ。
この場合はどう対処すればいいのか分からない。
「俺のことは心配してくんねぇの?」
「何言ってるのよ、どうせ深影がこの子に殴られるようなことしたんでしょ?」
少女は私から未だに布団の上に座り込んでいる青年に視線を落とした。
少女の青年を見る目は明らかに青年を疑う目。
それに対し、青年は情けなく眉を垂れさせた。
「・・・それ、ひどくね;」
「否定しない、ってことは何かしたのね?」
「ぐっ・・・」
思いっきり図星をつかれた青年はそのまま背中をのけぞらせる。
その様子を見た少女は肩を竦めて、大げさにため息をついてみせた。
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