「…俺、山を降りるよ」 「…えっ?」 桐島君だ。 「桐島君、冷静になってよ」 「俺は至って冷静だよ」 「でも…外は…」 「確かにこの天気だし、視界も悪い。危険なのも承知だ」 「なら…」 「でもここでじっとしていても何も変わらない。俺は皆を危険な目には合わせられないよ」 そう言って私の目を真っ直ぐ見つめる。 「―…自分だけ格好つけるなよ?」 「…木村?」 「俺も行く」 「―サンキュ」 二人は力強く握手を交わした。