私は先ほど見たあの
おぞましい光景を思い出しキッチンの床を指さした――が


「え…?」

床には何も無かった。


「ど…どういう事…?」


頭の中がパニックになる。


「それはこっちの台詞よ!」

春菜が苛立った様に口を開いた。


「私達はね、アンタの叫び声のおかげでこんな
明け方に叩き起こされたのよ!」


「で…でも確かに死体はあそこにあったのよ!」



「美…咲?」

美加も怪訝そうな顔で私を見た。


「おいおい、本気で言ってるのか?」


木村が呆れた声で言った。


「ほ、本当なの…確かに…遺体が…」


「じゃあその死体はどこに消えたって言うの?」


「それは…―っ」


「悪いけど俺は先に失礼するよ」


「私も」


「美咲…ごめん。信じてない訳じゃないけど…」


「うんん…いいの。ごめんね」


皆部屋に戻って行き、残ったのは、菜穂子と桐島君だけになった。



「起こしてごめんなさい…。桐島君も早く―…」


「俺は信じるよ」


「…え」


「原田さんは嘘つく様な人じゃないから」

「桐島…君」



「ありがとう…信じてくれて」


何より嬉しかった。