おろし

その瞬間、おかっぱの女の子が、とてつもない声をあげる----

「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!」

これまでの静寂が撃ち破られる!!
そして、目の前でも異変が起こる!!

あの婆さんの腰が逆に反る!!
そしてまた戻る!!
また反りかえる!!

そしてまた戻る!!
また反りかえる・・・

目の前の婆さんの腰は、まるでアメリカンクラッカーのように、前、後ろと反りかえっている!!

そしてまだ続く、おかっぱ少女の奇声・・・

まるで、夜の森に嘶く、キジのひと鳴きのように・・・病院内が騒がしくなる・・・

ピタ。

唐突な静寂・・・

何が起こるのだ?次に・・・
その瞬間----

「高足 痢煙さ〜ん」看護婦が呼んだ。
私は看護婦に返事をしつつ席を立った。

もう、待合室は騒がしくはない・・・静まりかえっている・・・
先程の光景はもうこの部屋には無い・・・
あの、腰を激しく反っていた、アメリカンクラッカー婆は、まるで物差しが背中に入れられたかのように、姿勢を正している。
そして、あの物凄い超音波の奇声を上げていた少女、おかっぱ少女は、いつのまにか、どこからか出した画用紙に、クレヨンで可愛い花の絵を描いていた。
ごく、普通の娘が描くように・・・
先程までの行動、光景は嘘のように消えている・・・

これはいつものこと・・・なのである。
このような患者が、毎晩のように集う所なのだ・・・
しかし、わたしは、まだまだ慣れることができないでいる。