今夜の通院の患者は、私をいれて三人のようだ・・・
待合室の長椅子に座って、わたしはジッと座っている・・・
わたしの正面には、白髪で、腰が異様に曲がっている婆さんが、何やら口から不思議なモノを吐き続けている・・・
そして、ある一定のリズムで、急に震え出し、『ヒヒ』と口から薄い、醜い笑い声を漏らす。
そして、また口から、何かを吐いている・・・

なんとも怪しい患者だ・・・

もう一人の患者の方はというと・・・
これも怪しい・・・

席は、わたしのすぐ隣に座っている。
その患者は、こんな夜更けには、存在(いる)べきではない年令の女の子である。
そのおかっぱの少女は、空に手を翳し、何やら描いている・・・
まるで文字をかくように、手を素早く動かしながら、ブツブツと何かを言っている・・・
その囁き、言葉を聞こうとするが、いったい何を言ってるのかさっぱり解らない・・・

異様な言葉を唱えているように・・・・聞こえる。

コチコチ・・・
コチコチと柱時計の振り子が揺れている・・・

コチコチコチ・・・・
コチコチコチ・・・・
コチコチコチ・・・・

時間だけが過ぎて行く・・・
コチコチコチ・・・・
コチコチコチ・・・・
コチコチコチ・・・・
わたしは、その音だけを心に刻む・・・

すると、ゴーンゴーンと柱時計の音、時刻を示す音がした・・・