その瞬間、
カサカサと上の方で音がする・・・聴覚に滑り込んで来た・・・
わたしは、天井を見上げる。
そこには、頭の無い体が、まるでゴキブリのように、カサカサと這いまわっていた・・・
もう、頭の無い身体の首(切断面)からは、血は、一滴も出ていない・・・

視野を下に戻す・・・
私は首(頭)を、もう一度、見つめた・・・
わたしは、顔についた血液が乾き始め、だんだんと顔が突っ張っていくのをこらえて・・・
顔を、その首に近付けた、その時--------

BUHABAAAAAAAAAAAAAAAA!!

いきなり彼女の首は、ガラスの破片を口から勢いよく吹き出してきた。

しかし、それはスローモーションのように、血液の粒と、硝子の破片が、
ゆっくりと、わたしの顔、眼に飛び込んで来る・・・・

わたしは思わず眼を閉じた・・・


---もぐもぐ・・もぐ。

わたしは御飯を食べている。
白米ではなく、赤飯を・・・

テレビからは『花葬』が流れている。

あれ?!わたし?!
今・・あの首は?・・・

蛍光灯がチラつく。

『・・・刹那の闇はどこにでもある・・・そう蛍光灯のチラつきにもだ・・・
光無くせば、そこには、常に存在する物が見えるんだよ・・・
しかし、それもまた、たまたま見えた物にしかすぎない・・・
しかし、眼に頼る者ほどこそ、このようなマヤカシにやられるのだよ・・・
光りに照らされた物が、もしも真実というならば、このようにも見える・・・』

---わたしはいつものように御飯を食べている。
白い御飯に茶褐色のものが入っている。

真っ白に映える茶褐色のモノ。

ゴキブリ・・・

お茶碗によそわれた、白い御飯には、大量のゴキブリが混じっていた・・・

バリバリ・・バリ・・・

わたしはそれを食べている・・・
平然と・・・
心はそこに在らず・・・

そして、蛍光灯はいつまでもちらついていた・・・。