現在、8時35分。



『…寝坊…した…』


最悪!最悪!最悪!

チラリと枕元に置いてある目覚まし時計を見ても、やっぱり8時35分。


お気に入りのスライド色のケータイを開いて、時計を見ても、8時35分。


『完璧に遅刻だよ……』


とりあえず制服を着て、ボサボサの髪を櫛で解かして、二つにくくった。


ま、いっか。と思いながら、カバンを持って、玄関に向かう。

母さんは寝てるかも知れないけど一応、
『いってきまーす』と言って家を出た。



自転車で15分。

これがあたしの通学方法。


ケータイにイヤホンを付けて音楽を聞きながら学校まで向かう。




―――――――――

職員室に行くと、保健医の百合ちゃんがいた。


『あ、百合ちゃんだ。』

「あら、紗羅ちゃん。遅刻?めずらしいわね」

百合ちゃんは私の家の隣に住んでいる。
多分、20歳だったと思う。


『うん。ちょっと寝坊しちゃって』


「また紗奈さんが変な事したんでしょう?」

百合ちゃんはふふっと笑いながら遅刻届けにサインしてくれた。


『ありがとー。母さん最近料理にハマってるからまた夕飯食べに来てよ』


「わかったわ。また紗奈さんに言っておくわ。」



職員室を出た後、小走りで教室に向かった。


――ガラッ

クラスメート達に挨拶をして、自分の席である窓側の一番後ろの席に座ってから、隣の席の美雨に話しかけた。

『美雨。おはよー』

「あっ紗羅っ!おはよ
遅刻したんだ?」


親友の神楽美雨。

眉の位置で切り揃えられた前髪にショートカットの髪。


『うん。寝坊しちゃってさぁー。』

「あは。紗羅らしいや」

チャイムが校舎内に鳴り響き、担任のが入ってきた。
「みんな。すまんが自習をしていてくれ」

そう言うと素早く廊下に走っていった。