「別に、しけてなんかいないもん」

「そう?」

プイッと、あたしは横を向いた。

「そう言えばさ、聞いたか?」

金田くんが言った。

「えっ?」

「課長の話」

その瞬間、あたしの胸がしめつけられた。

「結婚間近かも知れない彼女がいるんでしょ?

知ってるよ」

「そう」

「それに…あたし、見ちゃったの」

「えっ?」

驚いたと言うように、金田くんが目を見開いた。

涙が出てくる。

ちょっと話をしただけで泣くなんて…あたし、涙もろいよ。

「ごめん、目にゴミが入っちゃったみたい…」

なんて言ってごまかしても、涙がこぼれる。

「あたしね、見ちゃったの。

この前の夜、課長が女の人と一緒にいるところを…」

あたしは泣きながら言った。

「えっ…?」

ビックリしたと言うように、金田くんがかすれた声を出した。