「彩花」

「うわっ!」

いつの間にか、あたしの前に淳平がいた。

「何してた?」

毎度おなじみ、顔は笑っているけど、目は笑ってない。

「えっと、雑談…でしょうか?」

とりあえず笑ってごまかした。

何かの歌じゃないけど、笑って許して?

「へえ、雑談ねえ」

淳平が近づいたかと思うと、あごをつかんできた。

「こんな、至近距離で?」

キスしそうなくらいの至近距離で、淳平が言った。

こっちが唇を出したら、キスができるかも…なんて言う妄想は置いといて!

と言うか、今は妄想している場合じゃなーい!

「ずいぶんな距離で雑談するんだね」

ひぃ〜っ、めっちゃ怖い〜。

「――す、すみません…」

あまりの怖さに、あたしは謝った。