「泉、葬儀に来てもらってありがとうね」

「何言ってるのよ!そんな事より本当に大丈夫なの?」

泉が心配そうに、私の顔色を窺っている。

「うん。まだ少し信じられないんだけどね」


ストローをくるくる指で回しながら、私は答えた。


「大学は?」

「お母さんが少しお金を残してくれていたから卒業までは大丈夫そう。
保険金も出るしね」


この先の生活のことを考えると少しに不安だけど、バイトもしているし、当面の生活には困らないだろう。

大学のほうも何とか卒業できそうだ。



「瑞希!本当に来てたんだな!」

背後から肩を叩かれた。

「大ちゃん!」


振り向くと、大ちゃんの姿。


ノースリーブのTシャツに、ハーフパンツの井出達で、サッカーボールを抱えている。


きっと、これからフットサルなんだ。


「大地!先に行くぞ」

「おー、わりぃ!先始めててくれ!」


一緒にいた仲間に、大ちゃんは手を振って答えた。


フットサルサークルに所属している大ちゃん。

昔からスポーツ万能で、勉強もできた。

人当たりがよく、友達もたくさんいる。


背も高くて、体格もいい。

整った顔立ちに、爽やかな笑顔。

ここまで揃って、モテないはずがない。


現に、大ちゃんは昔からよくモテた。

女の子からしょっちゅう呼び出されていたみたいだし、そういう噂もよく聞いた。


大学でもきっと引く手数多なのだろう。


今別れた仲間の中にいた、マネージャーと思われる女の子の、わたしを睨む顔がそれを物語っている


それなのに、大ちゃんは不思議と彼女を作らない。

以前、その理由を聞いたら

「好きでもない奴と付き合ったってしょうがないだろ」

という何ともあっさりした返答が返ってきた。



(大ちゃんの好きな人って誰…?)


昔から何度も何度も、頭の中で唱えてきた疑問だ。


未だにそれは解決できていない。