{霧の中の恋人}


はやる想いでページを進めていくと、やはり小さな男の子の写真が続き、そのどれもに”シランくん”の文字があった。


もう1ページめくると、生まれたての赤ちゃんの横で、”シランくん”が赤ちゃんの手を握りながら丸まって眠っている写真があった。


”シランくんと、瑞希ちゃん”


この赤ちゃん、私なの?

なんで久木さんと私が……。





「人に掃除を押し付けておいて、自分はサボリか。
どういう神経をしているんだ」



背後から不機嫌そうな声が聞こえて、ハッと後ろを振り向く。


入り口のドアにもたれかかり、腕をくんだ久木さんが私を見下ろしていた。

私は咄嗟に、アルバムを後ろに隠した。



「…すみません…。
ちょっとお母さんの遺品の整理をしていて……」


「……顔色が優れないみたいだが、大丈夫か?」


「だ、大丈夫です!
ちょっと張り切り過ぎちゃったかな…」


心配そうに、私のほうへ歩み寄る久木さんを慌てて止めた。


これ以上、久木さんが近づくと、アルバムの存在に気付かれてしまう。


気付かれてはいけない──

何故か、そう思った。


「…まあ、無理はするな。
で、次は何をすればいいんだ?」


「えっと…じゃあ玄関の掃除をお願いします…」


「…分かった…」



久木さんは納得のいかない表情を浮かべながら、部屋から出ていった。


久木さんの存在が消えたことを確認して、私はもう一度、後ろに隠したアルバムを開く。