{霧の中の恋人}


久木さんが手に持っている新聞を取り上げて、ビリビリ引き裂いた。


「何をする!?」


その一枚を折りたたんで久木さんに手渡した。


「久木さんはこれで窓を拭いてくださいね。
窓ガラスを掃除するには、新聞紙で拭くのが一番なんです。
いいもの持ってるじゃないですか」


「………」


久木さんは諦めたのか、めんどくさそうに新聞紙を受けとって、ノロノロと窓を拭き始めた。



よしよし。


私はリビングに掃除機をかけたあと、自分の部屋の掃除に移ることにした。