{霧の中の恋人}


あれから、何も変わらない日常を送っていた。


大晦日、お正月


年末年始のイベントがあっという間に過ぎ去り、気がつけば年を越していた。


私は忙しいバイトに追われ、

久木さんともいつも通りだった。



あくまで、表面上は…。



あの一件以来、私の心の中は嵐のように荒れていた。


何だか落ち着かない。

京香さんの言葉も、京香さんの存在も気になってしょうがない。


でも、久木さんに聞くことは出来なかった。


また拒絶されるのが怖かったから。


突き離されるのが怖くて何も聞けず、疑惑はうやむやのままになってしまった。



どうして、私はこんなに動揺しているのだろう。

どうして、私はこんなにも悲しいのだろう…。



自分の心が、自分で分からない。


行き場のない想いは、竜巻のようにグルグル渦を巻いて、私の心の中を荒らしていく──…。